80年代後半、アジアにおける加速器建設の気運が急速に高まりました。その背景にあるのがアジア各国の国家計画。中国では、88年から中国高能物理研究所(IHEP)で電子・陽電子衝突型加速器「BEPC」が稼働しました。08年、その性能を大幅にアップグレードした「BEPC-II」が完成し、現在、高エネルギー物理学と放射光プログラム両方の目的で運用されています。
IHEPではさらに、国際リニアコライダー(ILC)の主要な要素開発となる超伝導加速空洞の研究開発にも本格的に着手。さらに、国家重大科学技術基礎施設の1つとして、日本の大強度陽子加速器施設(J-PARC)との協力のもと、J-PARCに匹敵する核破砕中性子源の建設も進められています。また、世界トップレベルの放射光施設となる「上海放射光」も、08年に建設が完了。今年2月に硬X線領域のファーストビーム発生に成功しました。
90年代に放射光施設が建設され、以降活発な活動が続けられている韓国では、今年1月、政府が、重イオン加速器を中心施設とする、国際的な科学ビジネス地帯の大型建設プロジェクトにゴーサインを出しました。やはり90年代に建設された台湾の放射光施設「台湾光源」は、05年に大規模なアップグレードを完了させ、さらに13年稼働予定の新しい施設「台湾光子源」の建設を開始しようとしているところです。
さらに、日本も正式にオブザーバー参加しているヨルダンの国際放射光施設「SESAME」や、つくば市にあった放射光加速器を日本の研究者が移転する形で01年に完成したタイの「サイアム放射光源」、シンガポールの小型放射光施設「シンガポール放射光源」など、アジアでは数多くの放射光加速器が活躍しています。インドでは、ラジャ・ラマンナ先端技術センター(RRCAT)でINDUS-Iという放射光加速器が99年から運転されており、05年には、INDUS-IIが完成。高エネルギー加速器研究機構(KEK)との協力のもと、超伝導加速技術の研究開発施設の建設も始まっています。
以上のようなアジアの台頭を背景に、KEKはアジアとの研究連携を深めています。
物質構造科学研究所放射光科学研究施設(フォトンファクトリー:PF)にインド専用の放射光ビームラインがあります。
2007年3月に行われた日本学術振興会の日印科学評議会での提言に始まり、KEK・インド政府科学技術省科学技術局(DST)間で協議を重ね、2009年4月よりKEKはBL-18Bを貸与し、2009年6月から予備実験が開始されています。
進展著しいアジア地域の加速器科学を発展させるため結成された組織にアジア地域将来加速器委員会(ACFA)があります。ACFAは、アジアにおける将来の加速器のあり方を検討する委員会で、アジア各国における加速器の建設や利用計画について検討し、提言を行ってきました。
A96年のACFA創設から今年で12年目を迎え、加速器科学におけるアジアの連携は、さらに重要性を増してきています。
アジア加速科学の新しいコミュニケーション・ツールとして「アジア加速器プラザ」ウェブサイトが2009年3月にオープンしました。
このサイトは、アジアの加速器研究施設の広報担当者が協力し、中国語(簡体、繁体)、韓国語、英語、日本語で運用しています。