KEKは、茨城県東海村に日本原子力研究開発機構と共同で大強度陽子加速器施設(J-PARC ジェイ・パーク)を建設してきました。J-PARCの加速器は、陽子を発生させ最初に加速するリニアック、333μAの大電流ビームを供給する3GeVシンクロトロン、及びメインリング(30GeV)から成ります。実験施設は、3GeVシンクロトロンからのビームを利用する物質・生命科学実験施設と、メインリングからのビームを利用する原子核・素粒子実験施設(ハドロン実験施設)、ニュートリノ実験施設があります。
ハドロンとは、原子核や素粒子の基本的な相互作用である強い力や弱い力と反応する粒子で、複数のクォークの組み合わせで出来ています。
強い力の研究では、ストレンジ・クォークを内包する原子核である「ハイパー核」の研究や、通常のクォーク3つまたは、クォーク・反クォーク対では理解できないエキゾチック・ハドロンなどの探索を通じて、強い力(核力)の性質やそれによって支配される原子核などの有限量子多体系の多様性・複雑性の統一的理解を目指します。
弱い力の研究では、稀にしか起こらないK中間子の崩壊事象を調べて、CP対称性や時間反転対称性などの時空の対称性の破れを検証し、従来の理解を超える新たな物理現象の探索を行います。
ニュートリノとは、電荷を持たない素粒子の一種で、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの3世代があることが知られています。加速器で100%純粋なミューニュートリノを作ると、距離と共にある割合で別のニュートリノに変化していきます。このように3世代あるニュートリノが飛んでいるうちに互いに入れ替わる現象を「ニュートリノ振動」といいます。T2Kニュートリノ振動実験では、J-PARCのメインリングによって大強度ニュートリノビームをつくり、295km離れた岐阜県飛騨市神岡町のニュートリノ検出器・スーパーカミオカンデに打ち込みます。ニュートリノ振動の詳細な観測を通じて、3世代あるニュートリノの質量と混合の全容を解明し、ニュートリノや電子と核子を構成する素粒子を大統一する理論の問題や、「なぜ素粒子は3世代なのか」、「われわれの世界にはなぜ反物質が存在しないのか」等の根源的な問題に迫ることができます。
パルスミュオンを用いた研究分野は、
1. ミュオンを微視的な磁気プローブとした物質、生命、化学などの研究
2. ミュオンの量子効果による運動やミュオンが創る新しい系の研究
3. ミュオンを触媒とする核融合の基礎研究
など広い領域に渡ります。また、新しい手法による大強度、あるいは低エネルギーのミュオンビーム生成にも取り組んでいます。
パルス中性子を物質に当てることで、物質中の原子や分子の配列や運動状態を知ることができます。磁性体や高温超伝導体の本質を調べる物性研究、燃料電池材料等の新材料構造研究、高分子や界面活性剤等ソフトマテリアルが作り出す表面・界面研究、原子核や素粒子に関する基礎物理学研究、更には医学研究や考古学研究への応用など、多岐に渡る研究を展開することができます。