加速器科学は、ミクロの世界の基礎法則の解明を先導し、20世紀のめざましい科学の進展に大きく貢献してきました。近年、加速器の果たす役割は多様化し、物質構造・生命といったマクロ現象の究明や、基礎科学の分野を超えた、医療・産業応用など、幅広い分野で活躍し始めています。今後、量子ビーム利用の促進とともに、加速器の活用の重要性はますます高まっています。KEKでは、新しい科学技術の展開として、加速器ビームの「エネルギー増強」「強度増大」「時間分解能向上」「コヒーレント性向上」を目標にかかげ、それぞれの性能を実現する"先端加速器"の開発に力を注いでいます。
特に、この開発のカギを握る2つの基幹技術、「超伝導加速空洞の高性能化」と「量子ナノビームの創生と制御」の研究に重点を置いて進めています。
国際リニアコライダー(ILC:International Linear Collider)は、史上最大最高の電子加速器。
世界中の研究者が実現に向かって努力しています。全長約31kmの地下の直線トンネル内に、超精密な高真空ビームパイプのシステムをつくります。そして、ビームパイプの一方の端から電子のビームを、もう一方から陽電子のビームを入射して光の速度にまで加速、中央部で正面衝突させ、ビッグバンとほぼ同じ高エネルギー状態をつくりだします。
物質のより精密な構造を見るために、そして、生命活動のより速い反応を観測するために開発されているのが、次世代の放射光源ERL(Energy Recovery Linac/エネルギー回収型ライナック)です。
ERLでは放射光を出し終えて不要になった電子ビームのエネルギーを、超伝導加速器を通して回収し、次の電子ビームを加速するために利用します。そのため、従来の蓄積リング型放射光源の1000倍の輝度、1000分の1の短いパルス幅を実現します。
加速器の素粒子実験で必要不可欠なのが、衝突反応を捉える高性能な測定器。衝突点に配置された数百万に及ぶエレクトロニクスの目が、すべての衝突を 捉えます。衝突によって新たにつくり出された素粒子の情報をあますことなく記録し、そこから新しい物理現象の証拠をつかむのです。研究の成否を握る測定器 への要求は、加速器の進化にともない非常に高度化しています。
小型高輝度光子ビーム発生装置開発プロジェクトは、文部科学省が公募した、平成20年度「光・量子科学研究拠点に向けた基盤技術開発」の「量子ビー ム基盤技術開発プログラム」として採択された研究開発プロジェクトです。
費やされる期間は約5年間を予定。小型高輝度光子ビーム発生装置が開発されることで、新たなる研究の開発から、新技術を利用した製品化など、様々な 形での社会への応用が期待できる研究開発が行われます。
本研究開発では、その中でも鍵を握る超伝導空洞のテクノロジーを開発し、同時に大強度で高品質な電子源をも開発。さらにはこれらの技術の実用化に直 結するためにレーザーを増幅させるレーザーパルス蓄積技術、および、このレーザーと電子ビームと重ね合わせるビーム衝突技術の研究も併せて進めていきま す。