放射線に関するFAQ(よくある質問)

KEKでの放射線に関してよく寄せられる質問をまとめてみました。
この他にも知りたいことがありましたらproffice@kek.jpで質問してみてください。

          1.放射線科学センターの研究
          2.放射線科学センターの役割(安全管理)
          3.一般的な放射線の質問

1.放射線科学センターの研究 (どんな研究をしているか?) 

Q1 加速器と放射線は関係あるの?

A1  加速器で人工的に作られるエネルギーの高い粒子線のことも放射線といいます。本機構では電子加速器と陽子加速器があります。 前者は電子や陽電子を加速します。ここでは電子がリングの中で回るときに発生する光(放射光)も研究に利用されています。 後者は陽子を加速しますが、陽子を物質にぶつけると発生する中性子、中間子、ニュートリノなども研究に利用されています。


Q2 放射線科学センターは何をするところ?

A2  加速器を安全に使用するため、加速器から発生する放射線を検出するための装置を開発したり、外に漏れないようにするための設計をしたり、放射線があたった時に生成する放射性同位元素を調べたりします。また、職員が安全に仕事をできるとともに、周りの住民の方々に迷惑をかけることがないよう様々な日常業務を行っています。


Q3 どんなことを研究しているの?

A3  加速器を安全に使用するため、センターの主な研究は放射線と化学安全に関する研究が行われています。放射線については大きく分けて3つあります。1)加速器から発生する放射線を検出するための装置を開発したり(検出器、測定技術)、2)外に漏れないようにするための設計をしたり(遮蔽計算、遮蔽実験)、3)放射線があたった時に生成する放射性同位元素(放射化、エアロゾル生成)を調べたりします。この他、4)電荷がプラスの電子(陽電子)を用いて物質の状態を調べたり、5)宇宙環境での放射線とその影響を調べたりしています。また、6)環境放射能の分析、7)環境や材料の分析なども行っています。化学安全に関連した研究としては、空気や水などの中に含まれる微量成分の分析法の開発などを行っています。全国の同様の施設の研究者と共同して加速器や放射線の安全利用を進めています。


Q4 放射線を検出する研究とは?

A4  放射線を検出するには放射線が物質に入ると電離したり、光が出たりします。そのような現象を詳しく調べると、正確に放射線を検出できることにもなります。放射線の作用は「暮らしの中の放射線」「1」〜「4」をご覧ください。 また、実際に放射線や放射能の検出システムを開発しています。もっとも大規模なものは機構全体に張り巡らされた放射線監視システム(NORM3)です。それとともに各種測定器や検出器を校正するための施設として、γ線や中性子線の照射施設を持っています。最近では宇宙線が宇宙ステーションでの飛行士や機器にどのような影響を与えるかについても研究しています。
 「1」http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-24.pdf
 「2」http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-26.pdf
 「3」http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-28.pdf
 「4」http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-29.pdf


Q5 放射線を遮蔽する研究とは?

A5  放射線は物を通り抜ける性質「5」があります。このため放射線が大きな物の中で別の放射線や熱に変わったり放射能「6」を作ったりする、放射線の動きの研究をします。

大事な応用は、放射線を安全に閉じこめるための遮へいの研究です。電子加速器の電子が遮へいの中で作る中性子「7」は電子よりも動き易いので、中性子の量を韓国のポハン加速器研究所と共同研究して測っています。KEKの陽子加速器でも遮へい中の中性子の測り方を研究しています。

電子と光子の動きを計算機上でミュレーション(模擬実験)「8,9」する方法は世界でいくつか開発されていますが、このうちEGS4「9」というシステムを米国スタンフォード加速器センターなどと共同開発しています。放射線を医療用に使う場合などに、よく用いられています「10」。

 リンク先
 「5」http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-30.pdf
 「6」http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-13.pdf
 「7」http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-32.pdf
 「8」http://www2.slac.stanford.edu/vvc/egs/tour/guidedtour.html
 「9」http://rcwww.kek.jp/research/egs/kek/
 「10」http://rcwww.kek.jp/research/egs/


Q6 放射性同位元素を調べるとは?

A6  加速器を運転すると、放射線によって加速器の電磁石、放射線を遮る遮蔽体、電磁石を冷やす冷却水、加速器の周りの空気中等に放射性同位元素が生成します。生成する放射性同位元素にはいろいろなものがあり、そのできかたやできる量は、各々の元素によって違います。また放射性同位元素によっては簡単に測れるものもあれば、測定手段がまだ確立していないものもあります。加速器の周りでどんな放射性同位元素がどれぐらいできるか、また測定するのが難しい放射性同位元素をどうやって計ればいいか研究しています。また生成した放射性同位元素は、空気中や冷却水中でどんな化学形や状態で存在しているのかも研究しています。さらに、これらの放射性同位元素から、加速器の周りで作業する人たちをどうやって守ればいいかその方法について研究しています。

加速器の周りの空気や、加速器を冷やす冷却水に含まれる放射性同位元素を放出できる濃度限度は法律で決められていますが、高エネ研では放出する前にイオン交換樹脂やフィルターを使って、できるだけ放射性同位元素を除去して、法律より十分低い濃度で放出しています。高エネ研の敷地の中や地下水、周辺の川や湖の水の中の放射能を測定して、高エネ研で放出した放射性同位元素で自然界が汚染されていないことを確認しています。

加速器の周りにあるいろいろな機器は、放射線にさらされているため、特に高分子材料(プラスチック類)は普通の状態に比べて劣化が早くなります。放射線に強いいろいろな高分子材料を、放射線特に陽電子線を使って開発したり、放射線にさらされるとなぜ早く劣化するのかを研究しています。
詳しくは「11」をご覧下さい。
 「11」http://rcwww.kek.jp/radchem/RC1.htm


Q7 空気や水を調べるとは?

A7  放射線にさらされる加速器室内では、空気の放射線分解により有害な腐食性ガスのオゾンや硝酸ガス、亜硝酸ガスなどが発生します。これらの化学物質は機器の腐食の原因となるため、加速器の運転中における濃度を知ることは重要です。そこで、空気中に微量に含まれる放射性核種の濃度や存在状態、腐食性ガスの濃度などを測定するための研究を行っています。

また、加速器の冷却水や周辺地下水、各種水試料などに含まれるナトリウムイオンの濃度を簡単に測定する方法に関連した研究も行っています。
「12」http://rcwww.kek.jp/research/analchem.html


Q8 加速器や放射線の安全利用の推進とは?

A8  放射線がもつエネルギーが、物に吸収される量(線量「13」という)を測ります。加速器から出る特有の放射線の線量を測って、人体に与える放射線の効果「14」を測る研究をしています。加速器の近くでできる放射能「15」の量を減らす研究や、物の中に出来た放射性同位元素「16」の種類と量を測り、出さないようにする研究もしています。加速器を持つ大学で放射線を安全に利用するための研究をしている全国の研究者と共同で、安全な利用を進めるための要望「17」を出しています。

 リンク先
 「13」http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-38.pdf
 「14」http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-38.pdf
 「15」http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-13.pdf
 「16」http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-12.pdf
 「17」http://rcwww.kek.jp/others/radsafe.html


2.放射線科学センターの役割 (安全管理について) 

Q1 加速器は危険なもの?

A1  加速器は粒子を高いエネルギーまで加速する装置です。加速するには高い電圧が必要になったり、強い電波を発生する装置も必要ですし、非常に重たい電磁石も必要です。このため働く人の安全には万全の注意を払わなければなりません。

高いエネルギーの粒子とそれに付随して出る粒子などを含めて放射線と言っておりますが、加速器が動いているときには強い放射線が発生することになります。そのために誤って動いているところに入り込まないように安全装置がありますし、放射線が万一外に漏れても検出できるよう放射線の監視装置があり、加速器を停止させる信号を送ります。


Q2 放射線の監視はどうやって行っていますか?

A2   放射線科学センターの1階にはNORM3と呼ばれる集中監視装置が設置されています。ここには機構内のさまざまなところに設置された放射線モニター265台から常時データが送られてきます。また、放射線に関する情報の送信も行われてていますので、万一放射線レベルが高い場合には加速器の安全システムへ信号が送られます。


Q3 加速器を安全に使うには?

A3  研究所では非常に大きな装置を使うので、多くの人が協力しあって働いています。皆が安全に仕事をするためには、いろいろな決め事が必要です。

また、装置は常に新しいものができたり、改良されたりしていますから、周知徹底しておくことが大切です。
車の免許証のようなものはありませんが、安全に仕事をするための安全講習会が開かれ、その講習を定期的に受ける事になっています。また、国内外の研究機関から来所する多数の研究者はそれぞれのところで放射線取扱いの認定を受けるとともに、当所が行う講習を受けた上でないと実験を行うことはできません。


Q4 研究施設から危険な排水や廃液は出ないの?

A4  放射線が発生する加速器の周囲から発生する排水は、放射性物質を除去する施設で処理され、放射性物質と有害化学物質が含まれないことを確認してから下水道に放流されます。化学薬品などを含む廃液や、化学薬品を取り扱う施設の洗浄排水などは有害化学物質のための除外施設で処理された後、放流されています。

また、研究活動により地下水が汚染されていないことを確認するために、機構敷地内や敷地境界付近の地下水を定期的に採取し、放射性物質や有害化学物質の濃度を測定しています。これまでの調査で、地下水中に放射性物質や有害化学物質は全く検出されていません。


Q5 研究所内の化学薬品はどのように管理されているの?

A5  化学薬品を購入したり持ち込んだりするときは、研究所で定められた責任者の承認を得てから入手することになっています。特に、劇物や毒物などの化学薬品は鍵のかかる保管庫に保管し、使用記録を残す決まりとなっています。また、可燃性の有機溶媒などを多量に保管する場合は、専用の屋内貯蔵所に保管することになっています。


3.一般的な質問 

Q1 放射線に関することはどこで調べられますか?

A1  当センターで製作した「暮らしの中の放射線」
http://rcwww.kek.jp/kurasi/index.html
に書かれていますのでそちらもご覧ください。また、
放射線医学総合研究所(http://www.nirs.go.jp/info/qa/index.shtml)や
日本アイソトープ協会(http://www.jrias.or.jp/)でも質問集があります。


Q2 放射線にはいろいろあるの?

A2  放射線は放射性同位元素が出すγ線、β線、α線などや加速器で作られるエネルギーの高い粒子線などを言いいます。放射能は放射線をだす性質、能力をいい、放射性物質は放射能を持つものを含んでいるものを言います。「放射能もれ」という記事が出ることがありますが、放射性物質が漏れた場合を言うことが多く、放射線が外に出たときにも誤って使われることがあります。


Q3 加速器を研究するところ?

A3  もちろん加速器そのものも研究開発していますが、それをさまざまなものを調べる装置として利用しています。加速器はものの究極の仕組みや構造を調べる学問分野である原子核物理、素粒子物理学の研究手段として発達してきましたが、最近では、生命現象や半導体材料など実に様々な分野にも利用されるようになってきました。このため加速器研究機構の中には、「素粒子・原子核研究所」と「物質構造科学研究所」があります。また、共通研究施設には4つのセンターがあって、計算科学、機械工学、超伝導低温工学そして放射線科学の研究を行っています。さまざまな分野の人が協力しあって研究を進めているのです。


Q4 加速器と原子炉とはどう違うの?

A4   加速器は粒子を加速する装置です。電子加速器はテレビと同じ原理で、動いている間は放射線が出ていますが、スイッチを切れば止まります。このため、動いているときに人が誤って入らないような設備が必要です。また、エネルギーの高い放射線を出しますので、それを遮るため地下に作ったり、厚いコンクリートの壁で囲まれています。

原子炉はウランなどに核分裂反応を起こさせる装置です。常に分裂しようとする性質を持っているので、徐々に分裂を起こすように制御しています。また、運転中には中性子が出ていますし、核分裂でできる生成物には強い放射能がありますのでそれらが漏れることの無いよう万全の注意が払われています。原子力発電は、核分裂で発生する熱を電気に換える装置です。


Q5 どうやって放射線を検出するの?

A5  放射線は電波と同じように目で見ることができません。そこで、放射線が出ていることを目で見て分かるようにする必要があります。 霧箱、泡箱、スパークチェンバーなどは放射線が通ったところが目でみて分かる装置で、サーベイメータは放射線の強さをメータの振れや音の強さで表すようになっています。
サーベイメータで放射線を検出するには、放射線が物質に入ったときにおきる以下の反応を利用します。
 1)放射線が入ったときにプラスとマイナスの電気をもったものに分かれる(イオン化、電離)。
 2)放射線が入った時に光が出る(シンチレーション)。


Q6 遮蔽とは?

A6  放射線を遮ることを放射線遮蔽といいます。遮るには放射線の性質を知った上で最善の対策を立てる必要があります。

 α線(ヘリウムの原子核);重たい粒子ですから透過力はなく、紙でも止まります。
 β線(電子);電子線はプラスチックやガラスでも止まります。
 γ線(電磁波、光と同じ);鉄や鉛などの重たいものほど止める力があります。
電子加速器は高いエネルギーの電子線ですからコンクリートや鉄などで遮る必要があります。比重の大きな物ほど2次的にX線が発生します。そこでこのX線を止めるような厚さのコンクリートなどが壁には必要になります。また、電子線が曲げられるときに出る光はシンクロトロン放射光と呼ばれており、赤外線からX線までの波長の光が発生します。  陽子加速器では陽子そのものは鉄などで比較的簡単に止めることができます。しかし高いエネルギーの陽子が止められると、中性子が発生します。

高いエネルギーの中性子はコンクリート、鉄で減速させます。 原子炉のように低いエネルギーの中性子の場合には中性子と同じ重さの陽子(水素原子)とぶつかると減速しやすいため水(H20)などが遮蔽に使われます。もっと低いエネルギーになると中性子を吸収しやすい物質(カドミウム、ホウ素)を使うと効果的です。


Q7 加速器で放射能はどうしてできるの?

A7  加速器で加速する粒子のエネルギーは高いため原子の中心にある小さな原子核にぶつかることができるようになります。原子核とぶつかって反応することを核反応と言いますが、そのとき原子核を構成している中性子や陽子などが原子核から飛び出し、原子核は不安定な状態になります。このようにしてできた中心部の原子核が不安定な状態になっている元素のことを放射性同位元素(ラジオアイソトープ)と言います。こういう不安定な原子核はβ線やγ線を出して安定になところに落ち着こうとします。放射線を出して落ち着こうというのが放射性ということですし、放射線を出す可能性があることを放射能といいます。

サイクロトロンを使って診断や治療のための放射性同位元素が作られています。